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人の自立を、支援させていただく

就労支援とは、通常の仕事に就くことができない人たちを、自立に向かって支援するサービスです。私が働く「就労継続支援B型事業所」とは分かりやすくいうと、家から出られない人や障がいを抱える人、統合失調症、双極性障害といった方々が社会に出る前に、日常の生活リズムを整える場所。まずは施設に来て、何か小さな仕事をして、次第にその難易度を上げて、最終的には就労を含む自立を支援していきます。

看取りが人生の終着点に関わる介護であるなら、就労支援は彼らと真摯に向き合い、これからの暮らしへと向かっていく出発点。一人ひとりと丁寧にコミュニケーションをとりながら自立に向けたサポートをすることで、利用者さんの心と身体の回復を実感できることが、やりがいにつながっています。

しかし、一方でこの仕事は、「人の人生を棒に振ろうと思えば簡単にできる」ほど、その人の人生のキーマンにもなりうる役割を担う仕事でもあります。そんな重要な仕事で最も大切だと感じるのは会話です。私は、就労支援において会話は命だと思います。

もちろん、最初に利用者さんの過去の経歴やトラウマ、なぜ社会参加が難しくなったかの理由は分かっている限りで共有されますが、人それぞれの理由やその人の本質を知るには利用者さんとコミュニケーションをとって知っていくしかないんです。

そしていきなり「相談してくださいね」といっても信頼関係が構築できていないと相談してくれる訳もありません。そのため、時間をかけた丁寧なコミュニケーションが必要です。

就労継続支援B型事業所に通われる方でもっとも多いのは、統合失調症の方々です。統合失調症の方々は妄想や幻覚、幻聴が主な症状のひとつ。そして、その妄想や幻覚、幻聴の内容や程度も人によって細かく違い、昨日とは違う今日の顔を見せることは珍しくありません。

生身の人間相手にどう対応するか。まさに毎日が勉強です。接し方ひとつ取ってみても「これでいいのか。ほかに方法はないのか」など考えるときりがありませんが、それこそがこの仕事のおもしろさだとも思います。

LOW ONE STEP.

「今日は外に出てみよう」「明日は〇〇さんと協力して荷物を運んでみよう」。社会復帰を目指す人にとって、自立への第一歩は小さなハードルをクリアしていくことから始まります。

最初から社会復帰に向けた大きな目標を設定してしまうと、心身ともについてこれなくなってしまう。家から出られなければ、まずは外に出して、生活リズムを一定にしてあげる。精神状態が日によって上下が激しく、同じペースで作業ができない人には、集中力をつけさせてあげる。

小さな一歩を一つずつ積み重ねていく、そんな「LOW ONE STEP」を心がけることが大切です。

例えば、野球に興味がないのに、親に無理やり野球クラブに入らされている子がいたとしたら、まずはキャッチボールの楽しさを教えてあげる。段階に合わせて、徐々に向上していく力に気づかせてあげる。そうすれば、いつの間にか野球を好きになってくれるかもしれない。私は利用者さんにもそのような意識で接しています。

就労継続支援B型事業所で作業をする人たちは生活リズムを整えることが主な目的のため、事業所と雇用契約は結んでいません。将来的には、雇用契約を結べる就労支援A型事業所などへ移行し、徐々に社会復帰に近づけるという大きな目標があります。

けれど、それも人それぞれ。就労A型でも十分働けるけれども、行きたくないという人もいます。そこは個人の意見を尊重して、無理に勧めません。それぞれの利用者さんが希望する生き方に近づけることが重要です。その希望に沿うことが、彼らの充実した生き方をサポートすることにつながるのです。

就労継続支援B型事業所を利用する方は、過去に深い傷を負って生きてきた方も少なくありません。そのため、刃物や血といった言葉の他、赤という色に至る繊細なものでも言葉にしないよう、注意を払っています。何気なく発してしまった一言が相手を傷つけ、安定していた精神状態を後退させてしまうこともあるからです。

そのように神経をとがらせる部分もありますが、うれしい瞬間も多々あります。「ありがとう」という言葉は私にとって一番やりがいを感じるときです。移動の介助や排泄物のお世話、介護の何気ない現場の一場面でも、心のこもった「ありがとう」をもらえるんです。

続けるから、向き不向きも分かる。

福祉に関わり、15年以上。これまでを振り返って、今の私がどれだけご利用者さんのためになれているかを考えると、自己評価は40点くらいだと思います。しかし、今の自分はまだまだと思う一方で、この仕事には決して完成形はないとも思います。毎日が勉強で、利用者さんによっても対応の正解はそれぞれ。だからもっと勉強すれば、昨日よりも今日、今日よりも明日さらに良い仕事ができる。

昔は利用者さんとの距離の取り方や接し方で失敗し、利用者さんを傷つけてしまうことが多く落ち込んでいました。でも今は先輩から「利用者さんに対する言葉遣いが変わった、接し方が変わった」と言っていただけるようになりました。今では「今日も問題なく1日が終わる」と満足できる日が増えていると思います。

当初は福祉の道に進むことを反対していた母も、私が熱心に仕事に励む姿に理解を示してくれています。将来は独立したいという目標もできました。その目標に向かい、母も介護福祉士の資格を取得。家族でひとつの介護サービスを展開したいと考えています。

大学生をはじめとした進路に悩んでいる皆さんには「行動し続けることがいかに大切か」を伝えたいです。私も手探りながらもこの道に立ち今に至っています。若い皆さんにもぜひ立ち止まらず動いてもらいたい。そうすればいつか自分に向いている仕事に巡り合えるはずです。

普通に暮らしていたら、福祉の仕事は遠い存在だと思うかも多いかもしれませんが、半年続ければ向き不向きが分かる仕事だと思います。幼いころからおばあちゃんの世話をしていた自分のように、人に尽くすことが好きな人には向いている職業だと思います。

私の友人に飲食店での接客業から福祉の仕事に転職した方がいます。仕事の本質が「人対人」という観点では接客業も福祉も共通する部分だと思い、この仕事に誘ったんです。

想像以上にドンピシャではまったようで、ヘルパーの国家資格取得を目指し勉強に励むまでになりました。今では私が教えられることも増えてきたほどです。皆さんもぜひ行動をしてみてください。そうすれば道が開けてくるはずです。

ライター 藤本雄太さん:

未知の世界の福祉業界が、仲村渠さんの話から人と人との繋がりや寄り添うことが核であると知りました。そしてそれは福祉の仕事にとどまらず、他の仕事や私たちの日常にも大切な教訓でした。質問は準備していくがそれは自分の範疇で考えた質問。取材中に何かエピソードが出てきた際にはそこを深掘りする必要があり、「取材は生き物」と実感しました。文章化の段階では、自分の個性が現れることに気づくと同時に、「そこに意味がある」と知り、ただの聞き手だけでない記者の存在意義を知りました。皆さんありがとうございました。


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