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入社後、はじめての大失敗。

 入社後は、建設現場に配属。大きな建設現場にもなると、その工程の中で数十社とのやり取りが発生します。ゆくゆくは、大勢の人をまとめ、安全に、もしトラブルが起こっても速やかに対応して現場をまとめていく立場で仕事をしなければなりません。しかし、まず初めは、掃除をしながら現場監督や職人さんたちの動きを観察して、作業の工程を学ぶことが仕事でした。

工程が多い建設現場の仕事では、まず全体の流れを把握することがとても重要です。でも、私は一つのことに集中すると、周りが見えなくなってしまう性格。掃除に集中しすぎるあまり、現場監督からは、「お前は掃除屋になるんじゃないんだから」と言われることもありました。でも、そんな姿を見て、先輩方に叱られつつも、日ごろから可愛がってもらいました。

 私の社会人としての勉強は掃除から始まりましたが、周りの人に支えられながら一つひとつ仕事を覚え、徐々に他の仕事も任せてもらえるようになりました。仕事を任されることがとても嬉しくて、より一層気合いを入れて現場に向かっていましたね。

少しずつ出来ることが増えてきたところで、建物の基礎部分に生コンクリートを流し込む、打設工事と呼ばれる工程の指揮監督を任されることになりました。生コンの発注から流し込みまでを統括する、これまでで一番大きな仕事です。

上司の期待に応えようと頑張って、打設工事を終わらせることができました。意気揚々と上司へ作業完了の報告。私の仕事ぶりを喜んでくれると思っていたのですが、工事の資料を確認する上司の顔が、段々と青ざめていくのが分かりました。

無事に流し込みを完了できたと思っていたコンクリートですが、なんと、発注の際に間違った強度のものを頼んでしまったのです。強度が不足したままでは違法建築になってしまうため、施工した基礎は破壊、解体し工事をやりなおすことになりました。あの日の失敗は、今でも鮮明に思い出せます。

社長、そして上司から贈られた言葉。

 後日、突然の社長からの呼び出しがありました。どんな怒られ方をするだろうと恐る恐る向かうと、社長からは意外な一言、「お前、良い失敗したな」。当然、怒られると思っていたので、まさかこんなにもやさしい言葉をかけていただけるとは思ってもいませんでした。

そして、大きな器で失敗を励ましてくれたのは、社長だけではありませんでした。現場に戻ると、先輩方からも「良い失敗したなぁ!(笑)」と明るく声をかけてくれました。実は、先輩方も若い頃、同じような失敗を経験してきたとのこと。同じ失敗をしなければいいだけのことだから、反省はしても気にしすぎるなと、私のことを気遣ってくれたのです。

けれど、一度失敗すると恐怖心が芽生え、なかなか前向きに仕事をすることができなくなりました。自分にこの仕事は向いていない、自分には監督なんて出来ないのではないかと、ずっと考えてしまっていました。

そんな後ろ向きな私を見て、「何事も挑戦しなければできるようにはならないよ」と激励の言葉をかけてくれたのも、工事のミスで大きなお世話をかけてしまった現場の先輩方でした。

あんな失敗をしても、またチャンスをいただけている。会社の器というか、人としての度量の大きさに感謝し、一念発起してまた頑張ることができました。当時を振り返ると、たとえやりすぎだと思われたとしても、何度も確認すべきだったと思います。

 そして、失敗しても、しっかりと報告すること。人間なので、失敗は必ずあります。でも、失敗を隠そうとすることが一番ダメです。だから、私も後輩を指導するときは、まずは相手を褒めることを心がけています。

怒られたら、怒られないように失敗を隠したくなるじゃないですか。相手の行動や気持ちをまずは褒めて、承認してあげながら、ここはもっとこうできるかもしれないと、改善と反省を促してあげる。ビクビクしながら仕事をしたり、嫌だなあと思いながら仕事をしていたら、気持ちよく働けないし、何より良い仕事ができないと思うんです。

どんな仕事でもそうだと思いますが、特に建設は会社の垣根を超えて、多くの人たちが関わりあう仕事です。人と人との関係があっての仕事なので、心を開いてコミュニケーションを取ることがなにより大切だと私は考えています。建設現場で2年半の経験を経て、設計部門に異動しました。現場の人たちから、寂しくなると言っていただけたのは嬉しかったですね。

設計部門では、主に図面を書く仕事や、図面どおりに建物が作られているかをチェックします。もともと、絵を描くことが得意だったので、お客さんの希望をその場で図面に描いてあげると、とても喜ばれるんです。小さな頃から好きだった絵と設計の知識が人のためになったことを嬉しく思いました。

笑顔で働く大人は、かっこいい。

 時々、私の周りは笑顔な人で溢れているなと思うことがあります。それは、照正組でも、家庭でも同じです。仕事は確かにラクじゃありません。大変なことの方が多い世界です。だけど、下を向いて不平不満を言っているよりも、何事も楽しく受け取って働いているほうがずっとカッコイイと私は思います。

そのために必要なのは、一つひとつの作業にやりがいを見いだすことができるか。私は得意な絵を活かし、お客さんが言葉にしているイメージを、その場で図面のラフにして描き上げることがあるのですが、そうやって、うまく言葉にできないところを目に見える形にしてあげると、とても喜んでいただけるんです。

その時のお客さんの喜ぶ顔だったり、仕事をしている中で誰かを笑顔にさせることが、私の一番のやりがいです。大変な仕事でも頑張ることができるのは、その瞬間があるから。一見、目的が分からないような仕事も、実は全て、お客さんの笑顔に繋がっている。

今私がやっているこの作業の先にはどんな人がいるんだろうと想像して、その人が笑顔になるように、工夫や想いを込めてあげる。そう思うとやる気が満ちてきます。

働く上では、一緒に仕事をする人の存在も大切です。照正組は家族のような会社なので、お互いになんでも言いやすい雰囲気があります。年齢関係なく、みんなが下の名前で呼び合ってるんですが、それが関係しているのかもしれません。

勇気を出して自己開示するから、信頼関係を築けると思っています。良いところも悪いところも引っくるめて、認め合う努力をして自分自身も素直な状態で在る様に努力することで、ありのままを出せるということは、気持ちよく仕事ができるヒントかもしれないですね。

私が子どもの頃、スーツ姿の疲れた大人の人を見て、正直こんな大人になりたくないなって思っていました。だから、スーツを着たくなかったですし、作業着を着て楽しそうに働いていた大人に憧れて、土木関係の仕事をしたいと考え始めたんだと思います。子どもはニコニコした大人に憧れます。私にも4人の子どもがいますが、どんなときでも笑顔を見せていたいです。常に、子どもたちに憧れられるような父で在りたいですね。

ライター 丸山紗香さん:

私にとって初めての取材とライティングで緊張しましたが、照屋さんの底抜けに明るい笑顔に心がほぐされ、私自身もこの経験を通して、明るくなれた気がしました!仕事愛だけでなく家族愛も溢れる熱い照屋さんにインタビューをさせていただき、非常に光栄です。取材の終わりには、結婚の良さをご教授くださり、ありがとうございました。建設業かっこいいですね!


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